#002_1「食べるオイル」
オイル=肌にとって「最良のアプリケーション」
オイルを肌にのせるとすぐに実感すること。それは表皮にしっかりと溶け込むような、肌なじみの良さです。その鍵を握っているのが、肌の表皮の一番外側にある角質層を組成する脂肪酸。わたしたちのからだの皮膚全体を覆っている脂肪酸とオイルの構造はとても似ているのです。それゆえ、オイルは肌への浸透力も高く、上質な精油等とのシナジー効果で、肌にストレスを与えることなくさまざまなスキンケア効果をもたらしてくれます。有効成分を確実に肌に浸透させることのできる「最良のアプリケーション」ともいえるオイルは、肌に潤いや透明感を与えたり、肌が本来持つ皮脂機能を補ってくれたり、炎症を鎮静させたりと、その効能は数えきれないほど。オイルの真の力を知るビューティコンシャスな女性たちは、すでにあらゆるアプローチでオイルを生活に取り入れています。彼女たちに注目されているのは、アルガンオイル、ホホバオイル、スクワランオイルなど、肌・髪・爪・ボディなど外からのアプローチに用いる美容オイルにはじまり、近頃では、アボカドオイル、グレープシードオイル、エゴマオイル、亜麻仁オイル、紫蘇オイルなど、インナーアプローチに用いられる食用(食べる)オイルにいたるまで実にさまざま。オイルの選択肢が広がるなかで、どんなオイルをどのように取り入れたらよいのでしょうか。オイルを解体する最初のステップとして、今回は「食べるオイル」についてご紹介していきます。
「オイルを食べる」というアプローチ
オイルは日本人の食生活において、「ダイエットの大敵」「コレステロール値が上がりそう」などと、いまだに敬遠されがち。でも、オイルはわたしたちのからだにとって不可欠なものであり、“からだに正しいオイル”を適量に取り入れることで、インナーアプローチにおいても驚くべき効能をもたらしてくれるのです。「オイルを料理に使う」というよりも「オイルを食べる」。つまり、調味料というよりも、食材のひとつとして捉え、取り入れることがヒントのようです。からだに取り入れるべきオイル=「食べるオイル」として、注目すべきオイルが〈オメガ3〉。〈オメガ3〉は「必須脂肪酸」とも呼ばれ、体内では生成できない不飽和脂肪酸に分類されます。この〈オメガ3〉を積極的にからだの内側に取り入れることで、肌や髪、爪などに潤いを与えるほか、抗炎症作用や、悪玉コレステロール値を下げるなど、美容のみならず、健康の側面からもさまざまな効用が期待されるのです。
〈食べるオイルの豆知識〉
"飽和脂肪酸"と"不飽和脂肪酸"
エネルギー源やからだを作る成分としてわたしたちの生活に欠かせない脂肪酸。
脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。“不飽和脂肪酸”は、食事などを通して外から補わなければならない必須脂肪酸と呼ばれており、「悪玉コレステロールを減らして善玉コレステロールを増やす」「動脈硬化を防ぐ」「集中力を高める(脳神経の発達を促す)」「皮膚の炎症を沈静化する(アレルギー症状を緩和する)」などの効能があると言われています。
積極的に食べたいのは、オメガ3
不飽和脂肪酸は、
オメガ3(生の青魚のオイル、亜麻仁オイル、エゴマオイル、紫蘇オイルなど)、
オメガ6(サラダ油、コーン油、べにばな油など)、
オメガ9(熱に強いオリーブオイル、アボカドオイルなど)に分類されます。
この不飽和脂肪酸の摂り方として、本来は、オメガ3:オメガ6を、1:2〜1:4で摂取するのが良いと言われているのですが、近年の日本人の欧米型の食事では、オメガ6の摂取がダントツで多くなり、その比率が1:20〜1:40に及ぶ場合もあるそうです。バランスよく摂取するためには、オメガ6の摂取を減らすと共に、オメガ3を多めに摂取すると良いということになります。是非、積極的にオメガ3を摂るように意識してみてください。
「食べるオイル」を、もっと簡単に。
オイルの力を日々の生活にとり入れるメソッドのひとつとして、食事でより簡単にオイルを摂る方法と、オイルを使ったオリジナルのレシピを、THREE AOYAMA内にあるカフェダイニング「REVIVE KITCHEN」のメニュー開発を手がける細井恵子さんに教えていただきました。
<プロフィール>
細井恵子 Keiko Hosoi
京都「ask a giraffe」、西麻布「HOUSE」、自由が丘「TODAY'S TABLE」などでパティシエールとしての実績を重ねたのち、2013年秋・表参道にオープンした「THREE AOYAMA」内のカフェダイニング「REVIVE KITCHEN」のメニュー開発などを担当。現在、同店の厨房でも腕をふるう。
Q:まず、普段の食生活に取り入れやすいおすすめの「食べるオイル」と、細井さんが注目する「食べるオイル」を教えていただけますか?
A(細井さん):「食べるオイル」はREVIVE KITCHENでもメニュー開発の折にいろいろ勉強したのですが、特に取り入れやすいのは紫蘇オイルやエゴマオイルあたりではないかなと思います。どちらも風味が日本人の味覚に馴染みやすいことから、料理に取り入れやすい〈オメガ3〉といえます。簡単な取り入れ方は、「食材と置き換える」方法。サラダのドレッシングをつくるときに紫蘇を使う代わりに紫蘇オイルを使ったり、シソ科のエゴマオイルを使ったりするなど、オイルの風味をひとつの食材としてとらえると、使い方のアイディアも広がりやすいと思います。また、REVIVE KITCHENでいま注目している「食べるオイル」は、近頃、インターネットなどでも購入できるようになった「インカインチオイル」です。まだ聞き慣れないオイルだと思いますが、このオイルには〈オメガ3〉が驚異的な割合で含まれています。生だと香りに若干青みがありますが、熱を加えても不飽和脂肪酸が損なわれないため、料理や焼き菓子などさまざまなメニューに活用していけたらと思っています。
Q:良質なオイルを1日スプーン2杯飲むと翌日肌がつるつるになる、なんて話をよく耳にしますが、「食べるオイル〈オメガ3〉」を普段の生活の中で、簡単に取り入れる方法を教えてください。
A(細井さん):オイルの取り入れ方のポイントは、まず難しく考え過ぎたり、ストイックになり過ぎたりしないこと。これはRIVIVE KITCHENのコンセプトでもあるのですが、楽しみながら実践することだと思っています。たとえば、〈オメガ3〉は熱に弱いので、和える、かけるなど、“生で摂る”といった基本さえ押さえておけば、普段の食生活に取り入れるのはとても簡単です。それこそ、いつも食べているスープや汁物の仕上げにさっとひと振りかけるだけでもいいのです。普段とちょっと違う味わいや香りが楽しめますし、そのくらいシンプルな方法であれば、毎日、どんな食卓のシーンでも簡単に実践できますよね。
野菜たっぷりのミネストローネや、クリーム系のポタージュにはオイルがとても合いますし、夏はビシソワースなど冷たいスープとの相性もバツグンです。もちろん洋食だけでなく、お味噌汁やお吸い物、中華のクリアスープなどにもOKです。それぞれの好みに合わせて、いろいろなスープとオイルの相性を試してみるだけでも、食の楽しみがぐんと広がります。
Q:それならすぐに実践できそうですね。「食べるオイル」をさらに楽しむためのレシピも教えていただけますか?
A(細井さん):冒頭でもお話したように、〈オメガ3〉は熱に弱いので、基本的には生で取り入れるのがおすすめです。ひとつめのレシピは、生でとりいれる簡単なサラダ。野菜をローストすることで、香ばしい風味がアクセントとして楽しめます。もうひとつは、先ほどご紹介したインカインチオイルを焼き菓子に取り入れたレシピです。インカインチオイルは熱に強い(熱を加えても不飽和脂肪酸が損なわれない)という特製があるので、炒めものや焼成するレシピにもおすすめです。ただし、熱を加えるとナッツのような香ばしい強い香りが生まれるという性質もあるので、その香りの強さを緩和するために、今回のマフィンにはグレープシードオイルも合わせて使っています。ちなみに、グレープシードオイルは〈オメガ3〉ではなく〈オメガ6〉に分類されますが、酸化しにくく、他の食材の風味を邪魔しないオイルなので、〈オメガ3〉との併用におすすめです。
「ズッキーニとルッコラ、ヘーゼルナッツのサラダ」
【材料】1人~2人分
ズッキーニ 1/2本
ルッコラ 1/3パック
インカインチオイル 大さじ1
ミント(刻んだもの) 5枚分
ライム 1/4個
塩 少々
ヘーゼルナッツ 4粒
パルミジャーノチーズ 5g
【作り方】
1.ズッキーニは斜めに約3㎜の厚さにカットし、インカインチオイルを少し振りかけ(分量外)、グリルパンなどで両面をさっとグリルする。
2. 分量分のオイル、ミント、ライム果汁、塩をボウルで混ぜ合わせたら、1.のズッキーニとルッコラを加えてさっと和える。
3.2.をお皿に盛りつけ、上にピーラーなどで削ったパルミジャーノチーズ、ヘーゼルナッツ、お好みでブラックパッパーをかける。
「バナナナッツマフィン」
【材料】(プリンカップ6個分)
インカインチオイル 20g
グレープシードオイル 60g
ブラウンシュガー 80g
全卵 1個
塩 2g
バナナ(できるだけ黒く完熟したもの)3本
米粉 120g
タピオカ粉 30g
クルミ 30g
【作り方】
すべての材料をボウルでよく混ぜ合わせ、型紙を敷いたカップに流し、オーブン(200度)で20~25分焼く。