#005_1「知られざる、色のパワー」
畑昌子(カラーセラピスト)
(有)カラーフィールド代表。東京都文京区で各種カラーセラピー(マンダラぬりえカラーセラピー、パステル和(NAGOMI)アート、オーラソーマ)の講師を務め、講座運営も行う。また、百貨店やアパレルメーカーなど企業のカラー戦略にも携わっている。http://www.k3.dion.ne.jp/~color-f/index.html
色は電磁波の一部
何気なく見ている色の正体は、実は「光」。太陽や様々な照明から発せられた色は、人の目で見える「可視光線」と呼ばれる電磁波の一部なのです。可視光線は、虹の色の順番と同じで、波長の短い方から順に、「紫、青紫、青、青緑、緑、黄緑、黄、黄赤(橙)、赤」と並んでいます。
一方、目には見えない「不可視光線」には、紫外線と赤外線があり、紫外線は皮膚にシミなどをつくり、赤外線はからだの芯から温める作用があることは、みなさんご存知の通り。それと同じように、目に見える可視光線の色にも様々な作用があり、古代からその力が利用されてきました。
歴史にみる色の力
古代から続くカラーヒーリングとは、肉体的、感情的、精神的なエネルギーのバランスの乱れを、色を活用して整えるものでした。古代の人々は、からだに染料(水や油に溶けるもの)を塗ったり、住居を顔料(水や油に不溶のもの)で塗ったり、カラフルな色の食材を食べたりして、色の持つ力を病気の治療や予防に役立てていました。また古代エジプトでは、太陽光線を通すように設計されたヘリオポリスの神殿で、プリズムで分光した光を病人に当てるという治療をしていたと言われています。
再び色の作用が注目され始めるきっかけとなったのは、ベトナム戦争後のアメリカ。今から約40年前のアメリカでは、兵士が戦争の後遺症を抱えてドラッグが蔓延し、精神状態が不安定な人々が刑務所に収監されていました。そこで無機質な色だった独房の壁をピンク色に塗り替えたところ、兵士たちにその色の力が作用し、彼らの荒々しい行動が落ち着きました。ピンクは、約3秒で筋肉を弛緩させる働きを持っているのです。
また、イギリス・ロンドンでは、黒い橋(ブラックフライア橋)を緑に塗り替えたところ、自ら飛び降りて命を断つ人が大幅に減った事例もあります。黒は全てを拒絶するイメージを持つ色ですが、緑は心のバランスを与えてくれる色だからです。
このように海外では、病気の治療や予防として色を活用してきた歴史がありました。日本ではそのような事例をあまり見聞きしませんが、寺院の建物や神社の鳥居には、魔除けとして朱色が使われてきました。朱色に似た赤色は、生身の人間を表す色。黄泉の国(死者の国)の人をブロックする色として、朱色が魔除けに使われていたのです。
見えなくても感じる、色の作用
日本にカラーセラピーが取り入れられたのは、今から20年ほど前のこと。上下二層のカラーボトルを使って、自分の本質や今後を見るシステム「オーラソーマ」が広まりました。これを開発したイギリス人、ヴィッキー・ウォールは盲目の女性。彼女は、色は視覚だけでなく他の五感でも知覚され、力を発揮するという事実の一例を示しました。
また他にも、皮膚を通して色が感じられていることを示す実験があります。人が目隠しをした状態で赤い部屋にいると血圧や体温が上がるのに対し、青い部屋にいると血圧や体温が下がるという実験結果です。赤い部屋にいた人を青い部屋に移すと、やはり血圧や体温が下がったことから、視覚以外の知覚で感じた色が、心だけでなく身体にも影響を与えていることが実証されました。
みなさんの身の周りにあるものは、どんな色が多いですか?次回のFEATURESでは、それぞれの色の作用についてより詳しくお伝えします。どうぞお楽しみに。