#012_1「意外!? お風呂と“美”の密なる関係」

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お疲れ気味の体と心をいたわるために、今月のFeaturesでは“お風呂”に注目。日本健康開発財団・温泉医科学研究所の後藤康彰さんのお話をもとに、体と心をほっこり温めキレイを呼び覚ます、“お風呂美容”をご提案します。

毎日入るのは日本人だけ? たった1℃で効果に差が!

「一般家庭の90%以上にバスタブつきの浴室が普及し、日常的に“お湯につかる”習慣があるのは、世界広しといえど日本だけなんです」と話すのは、日本健康開発財団・温泉医科学研究所の後藤康彰さん。

「入浴が心身の健康にもたらす最大の効果は、“温熱作用”。体が温まって全身に血が巡ると、手足の末梢にまで酸素と栄養が行きわたります。同時に体内の二酸化炭素や不要な老廃物を回収して、全身の代謝を促すのです」(後藤さん)。

代謝が促進するということは、肌のターンオーバーも促されるということ。新しい肌への生まれ変わりをサポートする意味でも、お風呂はキレイのカギといえそうです。

「実はお湯の温度によって、体に対する効果が変わります。38℃~40℃のぬるめのお湯は“副交感神経”を刺激して、全身をリラックスさせる働きが。反対に42℃以上の熱めのお湯は、“交換神経”を刺激して、活動モードにスイッチさせます」(後藤さん)。

疲れて帰って来た夜には、ぬるめのお湯で入浴すると、眠りにつきやすく。朝入浴する習慣のある方は、熱めのお湯で入浴すると、体がシャキッと目覚めます。

水圧によるマッサージ効果と、宙に浮くような浮遊感

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“バスタブに体を横たえる”――。たったこれだけのことでも、キレイになる効果が期待できるのをご存じでしょうか?

「お風呂につかると胴囲が約3~5cm縮むほど、全身に“水圧”がかかります。肺が圧迫されて自然に呼吸の回数が増えるため、全身に血流が巡りやすくなる。また下半身にかかる水圧は、抹消に滞った血液やリンパ液を、心臓に戻りやすくする働きもあります」(後藤さん)。

1日陸上で生活していると、重力の影響で夕方には下半身、特に足がパンパンにむくんでしまいがち。お風呂の水圧マッサージ効果は、そんなむくみの解消にも力を発揮してくれます。

「さらに、バスタブの中では“浮力”が働くため、体重が約10分の1まで軽くなります。陸上で体を支えていた筋肉や関節の、緊張をゆるめる働きが。また、フワフワ浮くような独特の感覚は、心身をリラックスさせてくれます」(後藤さん)。

働く女性は、毎日何かとストレスにさらされがち。1日の終わりには、温かなお湯に身をゆだね、まるで宙に浮くような浮遊感を味わって、心身の疲れを解放してあげましょう。

お風呂はボディの“化粧水”! しっとり美肌を育んで

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汚れを落とし、しっとりうるおす。ボディにとっての“スキンケア時間”に当たるのが、入浴のひとときです。“肌の汚れを落とし、清潔に保つこと”は、肌本来の生まれ変わるリズムを整える、とても重要なステップ。ボディソープで清潔に保つのはもちろん、時にはボディスクラブを用いて、不要な角質を優しく取り去るのもオススメ。つるつるすべすべの、なめらかな質感が手に入るはずです。

ちなみに、ボディの皮膚の構造は、顔の皮膚とまったく同じ。しっとりと保つためには、できれば化粧水で水分補給したうえで、乳液やクリームで保護するのが理想なのだとか。そういう意味で、角質を水分で和らげる“入浴”は、ボディにとっての“化粧水”といえるかも。肌が十分うるおったところで、入浴後軽く水気を吸着し、ボディミルクやボディオイルで保湿してあげると、理想の保湿バランスに整います。

毎日当たり前だった入浴習慣も、視点をちょっぴり変えると“キレイ”を育む秘密がいっぱい! 今までシャワーで済ませていた方も、ゆっくりお湯につかってみてはいかがでしょう? 次回のFeaturesでは、そんな“お湯の質”について、注目したいと思います。

後藤康彰
日本健康開発財団・温泉医科学研究所 主席研究員。専門分野は生理心理情報解析、加齢学、公衆衛生、行動科学等。
健康とアンチエイジングのカギを握る存在として“日本の入浴習慣”に着目し、入浴が心身に与える影響について研究を進めている。
日本をはじめ、世界各国の温泉事情に精通。
温泉医科学研究所 HP:http://www.onsen-msrc.com/