#021 野宮 真貴(歌手)
今年で歌手デビュー35周年を迎えました。
人に見られる仕事だからこそ、その時々で「一番キレイな自分でいたい」という思いで実践してきた“美人に見えるテクニック”。
それが溜まってきたので、そろそろみなさんにお伝えしても良いのではと思い、10年ぶりの書き下ろしエッセイ「赤い口紅あればいい」を出版しました。
「すべての女性は目立たないように生きてはいけません」これが、私がこの本で言いたかったことです。
日本の女性は年を重ねると、地味になったり謙遜したりしがちですが、そんな必要はないのではないでしょうか。
たとえばパリへ行くと、「素敵!」と思って振り返る確率が高いのは、若い女性より断然マダム。
無造作にまとめたヘアに赤い口紅、その人の生き方とおしゃれが美しく調和していることが、素敵さにつながっているのでしょう。
そんなフランスのマダム達は、いくつになっても女性としての自信と輝きを纏っています。
タイトルにつけた“赤い口紅”は、つけるのに少し勇気のいるアイテムですが、実は最も手っ取り早く美人に見せることができる最強のアイテム。
似合わないから、派手だから、歳だから、私なんかが……と、赤い口紅に臆病になる女性は意外と多いのですが、あなたを引き立てる赤は必ず存在するので、是非トライして欲しい。
そんな一歩を踏み出す勇気の象徴として“赤い口紅”をタイトルとしました。
この本は、ひと足先を歩いている私の経験から、30代、40代の女性のみなさんが回り道することなく、時間や労力を節約して“いつでも、いちばん美人”に見えるように書いたのですが、実は意外な反響があって驚いてます。
それは、私よりも年上の女性、私の母親世代の女性から「私と同じ考え方で共感した」といった反響をいただいたことです。
その中でも一番印象に残ったのは、78歳の女性からいただいた「赤い口紅は大好きです。残りの人生を健やかに、楽しく、美しく老いていきたいと思います」という1枚の葉書でした。
“老いる”という言葉にハッとさせられたと同時に、それが決してネガティブな意味でなく、残りの人生を美しく生きる覚悟でもあるということに感動すら覚えました。
女性はいくつになっても美しくいたいと心に願っていれば、人生の最後の瞬間まで美しくいられるに違いないと逆に勇気をいただきました。
私も彼女のように、いくつになってもその覚悟を持ち続けていたいと思います。
「美しさ」とは、人生の時間と自分を大切にしながら生きることにあると、彼女から教えてもらった気がします。