#025 伊藤 まさこ(スタイリスト)
京都に行くと、必ず立ち寄る老舗の道具屋さん。
そこのご主人の包丁を研ぐ後ろ姿が、なんとも美しい。
お年はたしか、もうすぐ80歳の男性である。
背筋をぴんと伸ばして、自分の手先に集中して、一心不乱に研いでいる。
聞けば、そのお方、家でも毎日包丁を研ぐという。
「顔を洗ったらさっぱりして気持ちええやろ?
道具も同じ。きれいに手入れしたら喜ぶはずや」
自分の食べるものをこしらえるための台所道具。
それを整えるということは、自分を整えるということ。
道具を大切にしている人は台所もきれい。
その人もきっと美しいはず、
という言葉を聞いて
身が引き締まる思いがした。
それ以来、私もできるかぎり毎日、包丁を研いでいる。
いや、包丁だけでなく台所全体をピカピカに磨き上げている。
美しい台所で料理をすると気分がいい。
知らないうちに背筋がぴんと伸びて、ささいなことに気づく心ができあがる。
菜っ葉の生きのよさ、ていねいにとった出汁の味わい、
風のにおい、湿った土を踏みしめる時の足の感覚、
大切な人のちょっとした仕草のちがい、鳥のさえずり、
自分の体の声……
それは家の中だけではなく、私をとりまくものすべてに通じるような気がする。
だから今日も、朝起きたらまずは顔をじゃぶじゃぶ洗って、台所に立ち、包丁を研ぐ。
背筋をぴんと伸ばして。
時々、心が少しざわつく時もまた包丁を研ぐ。
それから冷蔵庫とパントリーにある野菜をかたっぱしから細かく切ってスープを作る。
何も考えず、ずっと料理に向かっていると、ざわついていた心は次第におさまって、
できあがったスープを飲む頃には、いつもの自分に戻っている。
この時に思い浮かぶのは、京都のあのご主人の笑顔だ。
年齢や性別などは関係ない。
どう生きてきたかは美しさとなって、その人を表す。
自分に正直に、ていねいに向き合ってきた人だけが出せる美しさは、
私が最も憧れる美しさの形なのかもしれない。
- THREE QUESTIONS -
Q1 人間としての「美しさ」は、どんなところに表れると思いますか? A1 自分に正直に生きているということ。 Q2 パーティーのときや大切な人に会う前日など、「美しい自分でありたい」オケージョンの際に、必ずとる行動や習慣は? A2 前の日はきちんと睡眠をとって、体調を整えます。 当日は身だしなみを整えたら、気に入りの香水をほんのりと。 それからアイロンのかかったレースのハンカチをバッグにしのばせて。 Q3 THREEのイメージと、お気に入りのアイテムは? A3 作っている方たちが本当に好きで必要としているから、THREEの商品ができあがったのだろうと、使うたびに思わせる嘘のないブランドだと感じます。 お気に入りはハンドソープと、シャンプー&コンディショナー。香りもたたずまいも穏やかでさりげないところが好きです。 伊藤 まさこさんのお気に入りアイテム一覧・THREE ハンド&アーム ウォッシュ AC ・THREE スキャルプ&ヘア リファイニング シャンプー ・THREE スキャルプ&ヘア リファイニング コンディショナー