#029 加賀美 健(現代美術作家)
国内、海外でも有名な観光スポットにあまり興味がなく、どちらかと言えば人があまり行かないような場所に惹かれる。
毎年必ず行くサンフランシスコにある、テンダーロインという地元の人も避けるような治安の悪い地域は、特にお気に入りの場所。
そこには私にとってアートのインスピレーションになる物が沢山あり、そういったものが見つけられるというよりは、自然に見つかる。
落ちているものや、人々の行動に魅せられるその場所には、東京では絶対に見られない光景が広がっている。
昔から、道に落ちてる物を拾ってコレクションするのが好きで、車に何度も轢かれた空き缶、剥がれた靴のソール、壊れた眼鏡など、普通は見ても目に止まらない物に美しさを感じる。
私の作品の中に「ブロンズシリーズ」がある。ブロンズ作品は、人物や抽象的な形をモチーフにすることが多いが、私の場合、潰れた空き缶、使用済み綿棒、使用済み剃刀、履いた靴下、乾麺、ポテトチップスなどで、それらは普段何気なく目にする自分の美学が題材になっている。
展示の際には必ず真っ白な台座に乗せ、上からアクリルのケースを被せる。美術に変わる瞬間。
私にとってのアートの魅力とは、新しい価値観を与えてくれるツール。それは、自分にしか分からない価値観で全く構わないと思っている。
それが私にとっての美。
courtesy MISAKO&ROSEN