「変化を受け入れ、進化すること。」 〈INTERVIEW〉archiディレクター 一色紗英さん(後編)
“LIFE/AGING”Sae Ishiki
“LIFE/AGING”Sae Ishiki
女優の活動を経て、現在は3児の母であると同時に、自身が立ち上げたブランド「archi」のディレクターを務める一色紗英さん。今年20周年を迎えたarchiのアトリエで、まったく飾らない素顔の彼女に、自身の人生やその原点となる考え方について、ゆっくり流れる時間の中で話を聞いた。彼女の生き方やこれからを問うことで、自分らしさを保ちながら生きていく為のヒントが見えてくるはず。
照明よりも太陽の光が好き。
日焼けも老化ではなく進化だと受け入れている。
今年で41歳になる一色紗英さん。
子育てが落ち着いてきたという彼女は、40代をどう過ごしていくのだろう。
「20~30代は、子育てを主体に日々の時間を費やしてきました。私にとって、子育てがやりたいことだったんです。でも、何事にも終わりは来るもの。今が懐しくなる日もきっと来ますし、子どもは育ち、彼らの一瞬一瞬と向き合った後は、少しずつ手を離さなければなりません。
そうして気が付けば、自分の時間も随分持てるようになっていました。思いがけず空いた時間は、サーフィンや陶芸などの趣味を思い切り満喫しています。それでも、プライオリティは子どもたち。そこはこの先も変わりません。彼らとの時間には限りがあり、今しかありませんから。これからの40代、色々やってみたいことはあるけれど、傷めていた肩が治ったので目下サーフィンにハマっています。波、風、自分、どれも同じ時なんて一瞬もなく、一期一会。そこで力まず、波に調和させていく。静と動のバランスの中にあるその感覚に、すっかり夢中です」
サーフィンに夢中だという彼女は、
昔から自然の中で過ごすことに心地よさを感じるという。
「空が大好き。幼い頃から屋上に上っては空をよく眺めていて、地元の屋上はほとんど制覇しました(笑)。東京生まれ東京育ちという都会っ子の宿命なのか、人里を離れるには高い所に登るしかなかったんですよね。自分の視界が高くなると、マインドの視野もぐっと広がるんです。『イーグルに訊け』という私のバイブルがあるのですが、イーグルの視点はとても俯瞰的。屋上に上ることで、無意識にその視点を覚えていたのかもしれません。物事を客観的に捉えることで生まれる心のスペースと、その思考にはとても助けられてきました。若く多感な時期に芸能界で働いていたので、アイデンティティに混乱が起きることもありましたから。そんなとき、空を感じて自然と繋がると同時に、自分とも繋がれた。そういう視点や気づきのおかげで、ポジティブに過ごすことができたんだと思います。
もちろんそれだけでなく、何があっても本質の中に身を置いてこられたのは、家族に愛されて育ったというベースもあると思います。生まれ持った底抜けの明るさ、イーグルの視点、そして愛によって満たされていた環境。これらのおかげで、自分のままで生きてこられたのでしょう」
「ライトよりも太陽の光が好きだった」と彼女は笑う。
その一言だけで、芸能界ではなく今の生き方を選んだ理由が伝わってくる。
「メイクもほとんどしないし、太陽が大好きなので日焼けも大好き。老い、シミ、しわ、日焼け、どれも受け入れてしまったらいいと思うんです。抗うことなく受け入れると決めた方が、細胞にもいいと思います。老化じゃなくて進化だと思うから。もちろん綺麗な方がいいとは思うけれど、綺麗を保ちたいあまり太陽の光を避けなきゃいけないなら、それは本末転倒。例えば、桃もそのまま置いておいたほうが長持ちするじゃない? 色々触った方がすぐに黒くなっちゃう。ということは自然の摂理に合わせて抗わない方がいいと思うんです。極論すぎるかな……(笑)。
しわくちゃになってしまったとしても、笑顔が映えていたらそれで良い。とはいえ、そろそろ保湿くらいはしっかりした方がいいかなとは思っています。皮膚が薄いので新しいスキンケアを使うとヒリヒリしてしまいがちなのですが、今回紹介してもらった『エミング フェイシャル オイルエッセンス』は肌にとても合って、嬉しかったです。香りまで心地よくて、すごく気持ちいい。習慣になるようがんばります」
野生の勘のようなものを育み、大切にしてきた一色さん。
強い芯があるゆえに、しなやかで伸びやか。
それによって今なお更に輝きを増している。
「人生はハードルの連続。ギリギリ跳べたり、余裕で跳び越えたり、奇跡的に跳べたり……。そういう人生の中で、ハードルを倒してでも真っ直ぐ前へ突き進んで、倒れたハードルは立て直したらいいと思っています。毎日が偶然の一致でできていて、なるようにしかならないけれど、逃げたくないんです。かといって、私にストイックさは無く、適度に不真面目。
自分に弱点があっても上手に開き直って、ポジティブなエネルギーに変えてしまえれば、タイトにはならない。そんな自分でずっといられるのは、家族、友人、仕事、全てに恵まれ、自分がいる場所を大切な人たちとシェアできているから。本当に日々、感謝の気持ちしかないんです。だからこそ、私は常に“足りている人”でいたいと思っています。心の内が満たされていれば人と比べないでいられるし、自分の軸にいいエネルギーが集まってくると思うから」
自分の心にきちんと耳を傾け、自分をもてなしてあげる。気持ちいいと感じることに素直に従って暮らす。
感謝の気持ちを忘れず、そのエネルギーをまた周りの人に還元する。
そんな積み重ねが、彼女の人生に豊かさと輝きをもたらしている。