人の顔をあれこれ表現するのは心苦しいが、祐真朋樹さんを見て、まず印象に残るのが長く伸びた黒髪と強い好奇心を感じさせる眼だ。表情は豊かでやわらかく、クールさのなかに茶目っ気があり、でもピリッとした緊張感も持ち合わせる。そしてなにより若々しい。54歳にはまず見えない。
「僕の場合、太ってしまうと服が似合わなくなるので、そこは気をつけていますが、アンチエイジング的なことはほとんど気にしていません。ファッションに関して言えば、若作りはしたくないけど、オッサンくさいとは思われたくない。シワがあったり、シミがあったりするけど、いい齢のとり方をしている顔ってあるじゃないですか。これから年齢を重ねていくなかで、自分もそういうふうになれたらいいですね」
祐真さんが自分の顔について初めて意識したのは、小学校の高学年のときだったという。
「鏡を見ながら自画像を描くという図工の授業があって、僕の作品が階段の踊り場みたいなところに貼られることになったんです。別にうまかったとは思わないけど、自分で見てもまあまあ似てた。同級生とかには、からかわれたんだけど、その絵を見るたびに、おれってこういう顔をしているんだなあと思っていましたね。右目が一重で、左目が二重。基本的にはいまと変わっていませんね」
「自分の顔は好きですか?」と尋ねると、少し考えてから、こう答えた。
「大好きですってワケじゃないけど、嫌いだと生きていけないよね(笑)。ひとつずつ細かくチェックしていけば、イヤなところもあるだろうけど、だからといってどうしようもないじゃない。こういう顔だってことを好きになり、前向きにとらえて、自分で自分を応援してあげないとね」
スタイリングにおいても、「まずは自分で好きだと思う」ことがスタート地点だという。
「スタイリングって正解がない。だからまずは自分が好きだと思い、それを肯定する気持ちが大切なんだと思います。どんなに経験を重ねても、自信満々でできる仕事なんてないですよ。常に現場では予選からスタートしている気分です。いつも緊張感があるし、危機感がある。逆にそれがないとおもしろくない。自信と緊張感、そのふたつがあるこそ成長できるんじゃないでしょうか」
彼が日本のファッション界のトップランナーであるということは、誰もが認めるところだろう。そんな彼がベテランだ、大御所だとふんぞり返ることなく「常に予選からスタート」という気持ちで仕事に望んでいるのだ。その緊張感、言い換えるなら謙虚さが、彼の若々しさの理由なのかもしれない。おごることなく、いくつになっても成長しつづける。そういう人間はきっと“いい歳”をとり、“いい顔”になれるのではないだろうか。
祐真朋樹TOMOKI SUKEZANE
1965年生まれ、京都市出身。
雑誌『POPEYE』(マガジンハウス)のエディターを経てスタイリストに。『UOMO』、『Casa BRUTUS』、『GQ JAPAN』、『ENGINE』などの数多くのファッション誌でスタイリストとして活躍。ライカのカメラを愛用、自ら写真を撮ることもある。多くのアーティストやミュージシャンから高い信頼を得て、彼らの広告、ステージ衣装のスタイリングを手がけている。昨年、元SMAPの香取慎吾とともにファッションブランド「JANTJE_ONTEMBAAR」をスタート。そのディレクションも行う。