FIVEISM x THREE を体現する人物を“Ikon (アイコン)”と呼ぼう。
もちろん、スペルミスではない。唯一無二の独創性で人々にインスピレーションを与える人物。
ブランドのフィロソフィーである“Individuality”を象徴する人物。
そんな人たちのことを、FIVEISMは愛称として“アイコン”と呼んでいる。
“アイコン”のことを考えた時、真っ先に思い浮かんだ人物がいる。
日本のカルチャーシーンを牽引するミクスチャー・ロックバンドのDragon Ashのメンバーであり、ソロダンサーとして日本のパフォーマンスアートの礎を築いてきた、ATSUSHIだ。
しなやかな肢体、そしてステージ上でのダイナミックなパフォーマンスで、幅広い世代を魅了する彼は、また同時に無限の可能性を追い求めるビジョナリーとして、世界を股にかけて活躍の場を広げている。
直近では2019年1月パリで行われたヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)の2019-20年秋冬メンズコレクションのランウェイに登場した。
Photographed by Monica Feudi
FIVEISM x THREE のクリエイティブディレクター、Rie Omotoが彼と初めて出会ったのは2008年のこと。英『デイズド&コンフューズド』誌の撮影で、ATSUSHIモデル、Rieがメイクアップアーティストをつとめた。フォトグラファー、ノーバート・ショルナーによるこの撮影で、ATSUSHIは忍者のような黒い衣装に身を包み、アクロバティックなポーズを要求されたという。
その後、再会は間を置かずして訪れた。ソロでの活動を始めたばかりのATSUSHIは、初となる海外でのライブパフォーマンスを敢行する。場所は、Rieが拠点を置くNY。
現地で再会した二人は、その後現地のバーで意気投合し、動物、とりわけ犬に対する愛や、アートと文化に対する情熱を語り合ったという。
本連載が追求するのは、FIVEISM x THREEのキーエレメントである「Five Roads to Individuality」。
「Limitless possibility (無限の可能性 自分で限界を設けず、新たな可能性へ挑む姿勢)」
「Power of simplicity (シンプルなものの強さ 余分なものを削ぎ落として、辿りついた境地)」
「Purity of thought (純粋な想い 無邪気に夢を見ること、偽らない気持ち、愛)」
「Strong vision (たしかなヴィジョン 在りたい未来を描くこと、信念を持つこと)」
「Self-expression (自己表現 自分を偽りなく自由に表現すること、それを行う勇気)」
中でも、今回の対談でフォーカスするのは、「Self-expression (自己表現 自分を偽りなく自由に表現すること、それを行う勇気)」。
取材場所は、都内の小さなレストラン。
東京という都市の境界を超えたインタビューは、リラックスしたムードの中、夜が耽けるまで続いた。
FIVEISM × THREE(以下:F):ATSUSHIさんは、Dragon Ashのダンサーとしての活動に加え、ソロダンサーとして様々な活動やコラボレーションを行っています。ずばり自身のクリエイションはどんなカテゴリーに分類されると思いますか?
ATSUHI(以下:A):自分がしていることをカテゴライズすることは、あまり好きじゃありません。スタイルは常に変わり続けるし、常に新しいパフォーマンススタイルを追い求めているので。ブレずに強い気持ちは持ちながら、常に流れて、変化して、進化して、挑戦して、同じことをただ繰り返すことはないようにしています。自己表現のパイオニアになれたら嬉しいとも思っています。パフォーマンスを通して、自分自身のこと、日本人としての文化的アイデンティティを探求しています。常に次の進化、チャレンジ、成長の機会を追い求めています。自己流でやっているので、誰か他の人が作ったシステムやカテゴリーの枠組みの中に取り込まれることはありません。
F:強い信念のもとに、新たな境地を開拓されている気概が感じられますね。一方で、お二方のクリエイションにおける共通点のひとつに、日本の伝統芸能があります。Rieさんはもともと日本の伝統的な芸能に関心があったんですよね?
Rie(以下:R):私が生まれ育ったところでは、古くから神楽が執り行われていました。当時の私にとって、とても神秘的でインスピレーションに満ちていました。海外で長く生活していても、自分のルーツの一つだと感じています。
F:一方でATSUSHIさんは、東日本大震災の復興のために発足した「3.11 POWER OF LIFE」や「GAMA ROCK FES」、日本の伝統芸能である神楽とのコラボレーションである「万葉音楽祭」など、日本の文化を自身のパフォーマンスに多く取り入れています。
A:歌舞伎や能、神楽といった伝統芸能は本当にリスペクトしています。温故知新という言葉がありますが、私にとって伝統芸能を学ぶということは、新しいものを創り出すためのインスピレーションの一つだと言えます。特にその意識が強くなったのは、他でもない東日本大震災。震災が起こった1週間後に現地に訪れ、炊き出しの手伝いをしました。その時にパフォーマンスを披露したのですが、この活動は今でも継続的に行っています。被災地で、怪我をした犬と出会いました。あまりに心が痛み、東京へ連れ帰ったのですが、その後飼い主が奇跡的に見つかり、その犬がルビーという名前だと知りました。飼い主の方とは今でも連絡を取り合っています。
F:形にとらわれず、自己表現を続けてきたATSUSHIさんですが、これまでに表現活動で困難に直面したことはありますか?
A:自己表現は、あらゆる人にとってとても大切なことです。でも、多くの人は自分のことを表現することは難しいと感じているように思います。その点、私は恵まれているな。とつくづく感じます。ダンスというツールを持っていること、そして自分の感情や情熱を表現できるということ。踊ること、ないし身体を動かすことは、とても原始的な自己表現のツールです。それは言葉を必要としないコミュニケーションの形。赤ちゃんでも、ご高齢の方々も、人間でなくとも、体を動かすことで何かを伝えようとする。自己表現をするということは、生きていく上で無くてはならないもの。だからこそ、日本の社会ももっと自己表現をすることに対して自由に捉えて欲しい。そして、そのために自分がインスピレーションでありたいと願っています。
※後編ではさらに色々なお話をATSUSHIさんにお伺いしていきます。
ATSUSHI
1996年にダンスを始め、様々なクラブ等でのイベントに出演。
2001年にDragon Ashサポートメンバーとなり、2003年にDragon Ash正式加入。
2006年にソロダンサーとしても国内外の各地で活動開始。 今までの様々なステージで得た経験により、ジャンルや枠にとらわれない踊りと体をいかしたダイナミックな踊りを信条とし、今日のダンサーの在り方を変えることを目指していると共に、日本人ダンサーとしての在り方を常に考えながら活動している。 東日本大震災から、1年間で50回以上被災地へ足を運び支援活動を続け、現地との交流を深め、「GAMA ROCK FES」を毎年開催