国内外で活躍するアーティスト、SHUN SUDO。独学で絵を学んだ彼が絵を描くのはキャンバスの上だけではない。
「いままでいろいろなものに絵を描いてきました。NYのシャッター、マイアミの壁、東京でもいくつか壁に描きましたね。それからスニーカー、バッグ、財布、ライダースジャケット、あと椅子にも描いたなあ。立体に描くのも好きです。二次元とちがって見る角度によって印象が変わるから、それを考えながら描くのが楽しいですね」
そんな彼がいま小さな“筆”を走らせているのは、自らの爪。FIVEISMの「ネイルアーマー」をつかって、小さなアートを作ろうとしている。
「いわゆるきれいなだけの色ではなくて、絶妙にくすんだ色とかがあるのがいいですよね。クラシックカーにインスパイアされた色だときいてすごく納得しました。こういう色なら男性でも使いやすいし、おしゃれだと思います。女性がネイルでテンションが上がるのがわかる気がします」
出来あがったネイルは、それぞれ微妙に違う色に塗られていた。さらに彼は、自分の手にペイントをほどこし、ひとつの作品を作り上げた。
「爪はあえて雑に塗ってみたんですけど、そのくらいのほうがいいかなと。自分の爪に色を塗るのは初めてですけど、やってみると面白いですね。見慣れたはずの手に表情がうまれる。さりげない自己表現になりますよね」
絵を描くことも、メイクをすることも、自己表現の方法だと彼は語る。
「僕は言葉で何かを伝えるのはあまり得意ではないけど、絵なら自由に自分を表現できる。メイクも同じだと思うんですよ。見てほしい自分、伝えたい自分がいるなら、それを表現すればいい。そこに遠慮はいらないと思うんです。僕も自分でやってみて楽しいな、おもしろいなと思えた。無駄な思い込みはいらない。やりたいと思ったことは、誰に遠慮することなくやってみないと、人生つまらないじゃないですか。僕が最初にNYのギャラリーと契約したいといったとき、ほとんどの人が絶対に無理だと言ったんです。確かに常識で考えればそうだったかもしれない。でも僕はどうしてもNYで勝負したかったから、絵を持って訪ねていった。そうしたら飛び込みで契約することができたんです」
風景や植物、架空の生物などを描くことが多いSHUN SUDO。だが、その作品群を見ると、いわゆる人物画はそう多くない。
「やっぱり人の顔ってその人の生き方すべてが現れる。だからその人の人生も含めて好きにならないと、描く気にならないんです。顔に刻まれた人生、その重みも含めて描きたいと思うから。これまで描いたのはアンディ・ウォーホール、カール・ラガーフェルド、オードリー・ヘップバーン、ジョン・レノン、それくらいかな。自画像はないですね。小学生のときに描いたくらい。まだまだ人間としての重みが足りないですよ。でも描くなら今日のメイクしたバージョンの顔にしたいですね(笑)」
SHUN SUDOは、どんな対象を描こうと、ポジティブに生を謳歌するような作品を描いてきた。だが、この大きな時代の変わり目にあって、作品にも変化が訪れるかもしれないと語る。
「今年NYにアトリエを作る予定だったんですが、いったん中断しました。これまで明るく前向きにと生きてきたし、そんな思いを作品で表現してきたつもりです。でも家の外に出ることすらままならない状況で、僕自身もいろいろ思うことがありました。そのなかで前を向くというのは、いままでとは少しちがう強さが必要なのかなとも思っています。それでも間違いなくいえるのは、僕は絵を描くことが好きだし、死ぬまで絵を描き続けるということ。僕はそうやってしか自分を表現できないし、それをやめることはできない。日本も世界もどう変わるかなんて僕には分かりません。でもどんなふうに変化するのか、そこで自分が何を感じ、どんな絵を描くのか、少し楽しみな自分もいます」
アーティストの目は、もう未来を見据えていた。その未来を彼がどう表現するのか、いまから次の作品が楽しみだ。
SHUN SUDO
幼少期に歌舞伎子役を経験し伝統芸能に触れ、⻘年期は海外生活を送りながらアートへの興味を高める。2015年、NYで開催された個展をきっかけに和とポップアートをミックスした独自の作風が世界的に高い評価を受ける。写真はGINZA SONY PARKの地下の壁に作品を描くSHUN SUDO。
HP:www.shunsudo.com Instagram:@shun_sudo