―製品の話に入る前に、FIVEISMについて、どういったブランドなのか改めて教えてください。
HIROKI:僕が関わる前から、既に社内でメンズを中心としたジェンダーレスなブランドとしての構想が出来上がりつつありました。年齢性別、国籍、いろんなボーダーを超えて自己表現をしていくというコンセプトやプロダクト、クリエイティブの方向性など、僕自身もそうですが、ブランドに携わるアーティストであれば、皆が興味のある分野だと感じます。
YUTA:僕はTHREEとの関わりが長く、今年で13年目になるのですが、8年目か9年目のころにFIVEISMの話が出てきました。ディレクターはTHREEと同様のGlobal Creative DirectorのRIE OMOTOが務めていますが、FIVEISMはメンズに限定しているわけではなく、ジェンダーフルイドという考え方、枠を超えて使ってもらえたらという思いで提案をしています。
―受け取り手次第で、メンズのブランドにもジェンダーレスなブランドにも見られるという点はありそうですね。
少し話はそれますが、「メンズメイク」という言葉も、より浸透していくとその言葉自体がなくなるかもしれないなと思いました。
HIROKI:あるかもしれませんね。実はFIVEISMでもコンセプトワークの中に「メンズ」や「男性」といった言葉を一切入れていません。コアとなるのはブランドのメインメッセージであるIndividuality・個性というところで、使われる方が男性なのか女性なのかは限定していないです。
―THREEの女性スタッフさんの中でも、UVケアはFIVEISMを使っているという方もいるそうで、フレグランスのコンセプトのひとつである「余白を残す」は、受け取り手を選ばないという点において、ブランド全体にも言えることではないかと感じました。ここからは「おふたりにとってのフレグランス」について教えてください。
HIROKI:フレグランスって自己表現のひとつだと思っているのですが、フレグランスに限らず最近「自己満」ってすごく大事だなと。自己満足ってネガティブに捉えられがちですけど、自分が満足していないものを人におすすめできないじゃないですか。
僕がフレグランスに求めるのは純粋に、自分が気にいるかという点で。これを纏っている自分がどう思われたいか?というのはあまりないですね。TPOを考えた上ではありますが、自分がリラックスできるか、気分やファッションと合うかを重要視しています。
最後のピース、余白を埋めるのをフレグランスが担っていて、忘れると目に見えないのに忘れ物をしたような感じがするんです。人からはわからないし、言っても自己満じゃないですか(笑)。でも自己満を蔑ろにするのは、良くないなと思います。
YUTA:僕の場合、仕事の関係でフレグランスをつけられない時期があって、リズムがめちゃくちゃ崩れたんですよ。朝出かける時、日中や外出先で、1日何回か使うじゃないですか。今はまたつけられるようになったんですが、改めてリズムを担っていたんだなと感じます。
忘れた時の話をHIROKIがしていましたが、リュックとポーチそれぞれに小さい香水を入れると絶対忘れない。
昨日ポーチを忘れてしまったんですけど、リュックに入れていたからOK、という(笑)。フレグランスはルーティーンの中に絶対入りますね。
HIROKI:ルーティーンって対外的に見えるものがほとんどですが、香りって目には見えないものなので、他と一線を画すものですね。自分が心地良くいられるかどうか、気分が上がるかどうか、そのためにちゃんと今日選べているか?考えられているか?といった確認にもなっています。 FIVEISMのフレグランスもTHREEのGlobal Creative Director であるRIEさんによるものと伺っていますが、今回の「INVISIBLE EMINENCE」や「FUTURE MEMORY」についても教えてください。
YUTA:元々RIEさんがフレグランスが好きで、強いこだわりを持っているんです。フレグランスをいっぱい試してきた人が作るものってどんな感じだろうという期待が発売前からあって出来上がってきてた香りはやっぱり好きで、初めて試した時に女性も絶対好きだろうなと思ったんですよね。
HIROKI:女性のTHREE関係者に聞いても、皆好みだと言いますね。香りの性質上も、納得できるくらい、女性にも好まれる構成だと思います。あたたかみや柔らかさだったり、包み込まれる感じだったり、“第二章の「INVISIBLE EMINENCE」の方が、調香を見てもよりジェンダーレスになっているのかなと。
YUTA:僕は特にミドル〜ラストノートが好きですね。ベースにある香りというか。1作目「FUTURE MEMORY」とはギャップがあって、2作目との「INVIBLE EMINENCE」との 間の香りも欲しいなと思いました。
HIROKI:2作目が出ることによって、1作目の考え方や感じ方と初めて比較できるようになって、両者のイメージが鮮明になりました。感覚的な話になるんですが、物理的なものに例えた時に、「INVIBLE EMINENCE」の香りは柔らかいテクスチャーが肌に触れているような感じがあり、「FUTURE MEMORY」は自分のまわりに結界を張っているような感じで(笑)。でもそれがすごく心地よさを感じるところで、ソリッドさやセンシュアルさもあって。
全然違う香りだけれど、深みやスモーキーさは共通するところで、RIEさんが特にこだわっている部分じゃないかと思います。ブランドらしさというか、スモーキーさの中に経験や記憶、時間といったものが含まれるとよく言っているので、調香師の方もそこは意識しているとのことでした。
―HIROKIさんから「間の香りが欲しい」とのお話がありましたが、2つを重ねてつけるのも面白そうですね。違いが出ることによってそれぞれの言語化がなされたといいますか、香りだけではなくボトルの違いもいいですよね。この色味も当初想定されていたものとは違ったとか。
YUTA:家に2本とも置いてるんですが、それぞれ綺麗だなと思います。
―自然光なのか人工光なのか、角度によっても雰囲気が違いそうですね。
―ここまで香りやボトルについて伺ってきましたが、おふたりはどのようなシーンでフレグランスを使われますか?
HIROKI:今「FUTURE MEMORY」 をどういうシーンで使っているか考えていたんですが、1番はジムの時ですね。先ほどの「結界」という話というか、シュッと締めたい感覚というか。 昔から至る所で使っていた中で、シーンや時間帯で選んでいて、今は日中に「INVISIBLE EMINENCE」を使っていて、「FUTURE MEMORY」は朝と夜ですね。 眠れなくなってしまうので朝しか運動できなくて、ジムに行く朝イチで使うのと寝る直前にルーティーンとして使っています。 ただ、そうなってくると、この香りが起きる感じもすれば眠たくなる感じもあって(笑)。
スイッチを入れる役目もあって、コロナ禍で外に出られない時期、日本手ぬぐいに「FUTURE MEMORY」をつけて瞑想していたこともありました。いい習慣、リズムを作るにあたって本能的に作り出せる香りかもしれません。
YUTA:職業柄、ショーや撮影など人前で話すことが多いんですが、そういう時につけるのは「FUTURE MEMORY」ですね。昔はアクセサリーを重ね付けして仕事のスイッチを入れていたんですが、今は指輪しか残っていないです。指輪もいずれつけなくなるかもしれませんが、フレグランスは最後まで残りそうだなと思います。
HIROKI:「FUTURE MEMORY」との比較の話をしてきましたが、「INVISIBLE EMINENCE」はスパイシーなもの、ビターなもののバランスがとても秀逸に作られていると思います。調香師さんも「勇気のいる作業だった」とお話しされていて、香料を1滴ずつイメージをしながら作り上げていく中で、少しでも間違えるとすべてが壊れてしまう。笑っちゃうくらい難しいオーダーだったと聞いています(笑)。
調香師さんとRIEさんとの相性が良かった、というのもあるのかなと思いますね。クリエイションしている人たちの、言葉にしていない感覚的なものから生まれている部分が存在していたのかなと。 YUTAも僕も「FUTURE MEMORY」が大好きなので、これ超えられないでしょと思いながら携わっていたんですが、出来上がった今は同じくらい好きですね。
Profile
- 〈HIROKI〉
- 外資系メイクアップブランドをはじめ、国内有名ブランドでトップメイクアップアーティストとして活躍。国内外での撮影や各種イベントへの登壇、セミナー講師、販売員教育などにディレクションから携わり、多岐に渡る現場経験を積む。FIVEISM × THREEローンチより参画し、現在はフリーのメイクアップアーティスト。
- 〈佐藤 裕太〉
- THREE グローバル メイクアップアーティスト。国内外でTHREEのメイクアップショー、ワークショップ、メイクレッスンを行う一方で、各国のエディトリアルやコレクションバックステージでも活躍。社内ではメイクアップスペシャリスト育成プログラムにも力を入れている。